
多摩ニュータウン・落合商店街に、新たな飲食店「醸(かも)す料理店」が、2026年5月15日からプレオープンしています。
蒸篭ごはんや発酵シュウマイなど、発酵と点心をテーマにした小さな料理店。身体にやさしい料理を楽しめる同店を取材してきました。
約49年続いた町中華跡地から生まれた文化拠点「オチアウ」に出店

お店の場所は多摩ニュータウン・落合商店街の一角です。

昨年、約49年の歴史に幕を下ろした中華料理店「郷林(きょうりん)」の跡地に誕生した多摩ニュータウンの新たな文化拠点「Meet / Eat / Culture オチアウ」の店内に出店しています。

店内はカウンター6席ほど。壁の一部は、以前営業していた中華料理店「郷林」のものを残しているそうで、どこか懐かしい雰囲気。
ゆったりとしたBGMが流れ、時間が止まったかのような感じがします。

このお店を運営する店主のおかだかおりさんは多摩ニュータウンに在住。
2000年前後のカフェブーム期には、その火付け役の一つともいわれる「デザートカンパニー」で、商品開発にも携わっていたそうです。
当時、アジアのヘルシーな食材に魅了され、独自に研究を重ねながら、「包む文化」や「分かち合う文化」にも強く惹かれていったといいます。
その後は、雑誌媒体へのレシピ提案やケータリングなど幅広く経験を積み、現在まで長年にわたり、フードコーディネーターや料理研究家として食を通じた場づくりや提案を続けてきました。

「醸す料理店」の始まりは、隣接する「STOA(ストア)」で2020年から始まったPOP UPイベント「醸す料理展」でした。
「STOA」は、落合商店街で活動する「ニューマチヅクリシャ」が手掛ける地域のコミュニティ拠点です。人や文化が交わる場所として、展示やイベント、ワークショップなども行われています。
そこで月1回ほど開催されていたのが、発酵をテーマにしたPOP UPイベント「醸す料理展」でした。

「醸す料理展」では、おかださんが長年大切にしてきた「食養」や「医食同源」の考え方を軸に、ライフワークにしている味噌作りや麹、梅やゆず胡椒など、季節ごとの手しごとを取り入れた料理を提供していました。
おかださんは「薬に頼らなくても、食事で元気を保てたらいいなと思っていて。『醸す』には発酵という意味もありますが、身体を整えたいという気持ちもあるんです」と、話します。

そうした考え方と、アジアの食文化への親しみが重なり、“発酵 × 点心”という現在のスタイルを少しずつ形にしてきました。
当時はコロナ禍ということもあり、回を重ねるたびに人とのご縁がゆっくりと醸され、この場を楽しみに訪れる人も増えていったそうです。近年は本業が忙しくなり、POP UPイベントを開催する機会は少なくなっていました。
そうした中で、よく訪れていた「郷林」の閉店を知ったおかださんは当時、大きなショックを受けたと話します。

この場所を何とか残そうと動いたのは「ニューマチヅクリシャ」の皆さんでした。
「郷林」の店舗を事業承継する形で、「食と表現が交わる場」をコンセプトにした新たな文化拠点「Meet / Eat / Culture オチアウ」をスタート。
施設内で飲食を担う人を探す中で、白羽の矢が立ったのがおかださんでした。
「最初は店をやるつもりは全然なかったんですが、(閉店後の郷林の)厨房を見せていただいた時に、不思議と安心したんです」と話すおかださん。「なにか私でお役に立てれば」という思いが芽生え、出店を決意したそうです。
こうして、これまでのPOP UPの名前を引き継ぐ形で「醸す料理店」が誕生しました。
おかださんは「新しい店を作るのではなく、“記憶を引き継ぐ”ことを大切にしたい」そんな思いが、今回の出店につながったと話します。
「醸す料理店」のメニュー

「醸す料理店」のメニュー(取材時)はこちら。
発酵と季節の素材を軸に「醸す蒸篭ごはんセット」をはじめとする食事や一品料理(15時から)、甘味やドリンク、紹興酒などのお酒も楽しめます。
醸す蒸篭ごはんセット(※現在は事前予約制)

今回は事前予約制の「醸す蒸篭ごはんセット」(1,800円(税込))を実際にいただきました。

蒸篭の蓋を開けた瞬間、まず飛び込んでくるのは湯気と香り。中華おこわは、もちもちとした食感で、噛むほどに旨味が広がります。
その上には、しっとり柔らかな熟成チャーシューがどんと鎮座。自家製味噌入りコチュジャンを絡めると、発酵のコクと辛味が加わり、優しい味わいの中にもパンチを感じます。

ねぎ塩麹スープは優しい味付けでほっこり。さらに塩麹で炊いた大根に発酵辣油をかけた一品や、醤油麹のナムル、甘酒を使ったにんじんラペの発酵惣菜3種はそれぞれ違った風味があり、少しずつ味わいながら食べ進めるのも楽しいポイントです。
発酵シュウマイ

続いて「発酵シュウマイ」(4個600円(税込))は蒸篭の蓋を開けると、ふわっと立ち上る湯気が印象的。ふっくらとしたシュウマイの上には黒酢と合わせた麦麹の醤油漬けがトッピングされています。
中には干し椎茸、干しキクラゲ、お漬物など、その時々で変わるそうで、この日は東北の「いぶりがっこ」入りでした。
実際にいただくと今まで食べたことがないコリッとした食感が印象的。麦麹の醤油漬けが全体の旨味を引き立てています。
米粉バナナケーキと緑豆烏龍茶 オーツミルクティ

甘味デザートとドリンクはグルテンフリーの「米粉バナナケーキ」(500円(税込))と「緑豆烏龍 オーツミルクティー」(700円(税込))をチョイス。

「緑豆烏龍 オーツミルクティー」の中に入っている緑豆は、小豆に似た食感が印象的です。

「Meet / Eat / Culture オチアウ」には、「醸す料理店」の他にアーティストのギャラリー兼制作スペースや事務所が併設されています。
(※アーティストスペースは「オチアウ」の会員がスタジオスペースに在室している際は見学・入室可能です。ただし、制作状況などにより見学できない場合もあるため、当日の状況に応じた案内となります)

「醸す料理店」では、このスタジオスペースで毎月1回ほど「季節の手しごとコース」としてワークショップも開催する予定です。(※ワークショップの開催は「オチアウ」の公式Instagramから告知予定)
先日は、画家・岩岡純子さんとコラボして、パイナップルやキウイ、オレンジなど、発酵シロップに使う食材を参加者それぞれがデッサンしながら、同時に「酵素シロップ」を仕込むというユニークなワークショップでした。
おかださんは「デッサンと麹を使った発酵ワークショップを組み合わせることで、アートと発酵をもっと身近に感じてもらえる場になりました。互いの感性をひらき合う、とても豊かな時間でした」と振り返ります。

ワークショップなどで作った「酵素シロップ」は店内メニューとしても販売予定。
この日は先日制作した「イチゴの酵素シロップ」で作った「季節の発酵ソーダ」(700円(税込))をいただきました。
季節ごとに違った味に出会えるのも楽しみのひとつです。

お店では、おかださんが手掛けた発酵スパイスや「醸す蒸篭ごはんセット」の熟成チャーシューの上にも乗っていた「発酵コチュジャン」などを販売しています。
地に足をつけて、少しずつ育つ店へ

「醸す料理店」は、現在はプレオープン期間として、金・土曜を中心に営業。ランチタイムは当面の間は事前予約制で営業しています。(※営業日は「醸す料理店」公式インスタグラムをご確認ください)
店主のおかださんは、「いろいろな人に声をかけられるんです。それはやはり「郷林」さんがここで長年営業されて地域の方に愛されていたから。それを引き継ぐ形で、じっくり根を生やして、お店を育てて、長く愛されるお店にしていきたいです」と話していました。
約49年続いた町中華からバトンを引き継いで、新たな形で始まった「醸す料理店」。
この場所もまた、時間をかけながら少しずつ醸されていきそうですね。
醸す料理店
所在地:東京都多摩市落合4-16-1(Meet / Eat / Culture「オチアウ」内)
営業日:金・土曜中心(他・不定期予約制)
営業時間:11:00〜18:00(L.O.17:30)
予約:InstagramのDM・メール(kamosu.ryori.10@gmail.com)より受付
※営業日・メニューは変更となる場合があります















