今回は2024年11月30日に開催された「第16回TAMA映画賞授賞式」のまとめをお伝えします。
当日はYouTubeでのライブ配信が行われていましたが、今年も授賞式のアーカイブ動画が2025年3月末までの期間限定で公開されました。
山中瑶子 監督(最優秀新進監督賞)
『ナミビアの砂漠』で最優秀新進監督賞を受賞したのは山中瑶子監督。
山中監督は同作を作る過程で河合さんと何度も話し合い、今の日本での生活感覚を共有しながら物語を形作ったと言います。同作は第77回カンヌ国際映画祭「監督週間」に出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞。海外からもいろいろな感想や反応があったと話しました。
近浦啓監督(最優秀新進監督賞)
『大いなる不在』で最優秀新進監督賞を受賞した近浦啓監督はビデオメッセージでの出演。
「この度は歴史あるTAMA映画祭で最優秀新監督賞をいただき大変光栄に思います」と挨拶。また同作で最優秀男優賞を受賞した藤竜也さんについて「昨年、スペイン・サンセバスチャン国際映画祭で最優秀俳優賞を受賞された時の会場の熱気。そして今年、劇場公開のために訪れたニューヨークの観客の方々のスタンディングオベーションを目の当たりにして、その偉大さを改めて実感しました」と話しました。
早瀬憩さん(最優秀新進女優賞)
『違国日記』『あのコはだぁれ?』で最優秀新進女優賞を受賞したのは早瀬憩さん。
「『異国日記』という大切な作品で、このような素敵な賞をいただけてとても嬉しいです」と受賞挨拶。同作で早瀬さん演じる15歳の朝のおば・槙生を演じた新垣結衣さんについて聞かれると「新垣結衣さんが演じている槙生ちゃんを見て、私も現場で朝として入れたので本当に感謝しています。現場でもいつも優しく見守ってくださっていて、お芝居の相談をした時にも一緒に考えてくださって本当にたくさん助けていただきました」と新垣さんに感謝を伝えていました。
森田想さん(最優秀新進女優賞)
『辰巳』『朽ちないサクラ』『サユリ』『NN4444』『愚鈍の微笑み』『正欲』で最優秀新進女優賞を受賞した森田想さん。
「『辰巳』という映画はすごく暖かい人たちで作った映画です。このような素敵な場で評価していただいたこともすごくうれしいです」と笑顔で受賞挨拶。「子役からやっているので長い時間をかけてしまったんですけど、今までもすごく好きな先輩方が新進男優賞や女優賞をとっていらっしゃるので、光栄に思っています。そして、いつも応援してくれている事務所の方や、家族や友人に感謝したいと思います」と、感極まる場面もありました。
齋藤潤さん(最優秀新進男優賞)
『カラオケ行こ!』『瞼の転校生』『からかい上手の高木さん』『正欲』で最優秀新進男優賞を受賞したのは齋藤潤さん。
「僕がここに立てているのは力強いスタッフの皆様、主演の綾野剛さん、キャストの皆様、そして劇場に足を運んでくださって作品を愛してくださる皆様のおかげだと思っています。感謝の気持ちでいっぱいです」と受賞挨拶。「撮影中は役を愛する大切さだったり、その責任だったり、自分自身の弱さを教えてくれるそんな年になって、自分の中で幸せだなって思える瞬間がたくさんありました」と今年を振り返りました。
松村北斗さん(最優秀新進男優賞)
『夜明けのすべて』『ディア・ファミリー』『キリエのうた』で最優秀新進男優賞を受賞した松村北斗さんは、スケジュールの都合でビデオメッセージで出演。
「自分の人生でなかなか訪れるような機会ではないと思いますので、今日会場に行けなかったことは本当に悔しく思います。選んでくださった皆様、そしてここまでお世話になった皆様、本当にありがとうございます」と受賞コメント。「まだまだ経験が少ないので、やったことない役の方が多いんですけど。空想のもの、例えば未来とか未来人みたいな、みんなで話し合いながら作っていけるような、架空のものとかをやれたらなんか楽しそうだなと思います」と今後について話しました。
押山清高監督 及びスタッフ・キャスト一同(特別賞)
『ルックバック』で特別賞を受賞したのは押山清高監督とスタッフ・キャスト一同。
登壇した押山監督は「原作に私自身を投影して、私の自伝的な作品として描けるかが、この映画をしっかりとした作品にするために重要なことと考えました。映画に出てくる藤野や河本と私自身が、かなり重なる部分がある生い立ちを歩んできたものですから、容易に作品に自分を投影することはできました」と話しました。
呉美保監督 及びスタッフ・キャスト一同(特別賞)
特別賞もう一作品は『ぼくが生きてる、ふたつの世界』の呉美保監督とスタッフ・キャスト一同。
2015年のTAMA映画賞・最優秀作品賞『きみはいい子』以来、9年ぶりの長編映画となった呉監督は「子供を産んで二人を育てていた日々で、もう一度映画作りに戻りたいなと思いながらも、もう映画を撮れないんじゃないかっていう暗いトンネルの中にいる気持ちでした。目の前には私の大好きな子供たちがいるので、今日を大事にしてたらいつか撮れると思った時にこのお話をいただきました。『ぼくが生きてる、ふたつの世界』は本当に普遍的で、おそらく誰もが持つ感情を描けるんじゃないかなと思って、私の復帰作にしたいと思いました」と受賞挨拶しました。
河合優実さん(最優秀女優賞)
『ナミビアの砂漠』『あんのこと』『ルックバック』『四月になれば彼女は』で、最優秀女優賞を受賞した河合優実さん。
今年は映画5作品に出演。テレビドラマ『不適切にもほどがある!』(ふてほど)など、話題作に次々と出演し、大活躍を見せた河合さんは、今年印象に残ったことを聞かれると「今年はカンヌ映画祭に行かせてもらって、その時に今まで自分が出た作品だったり、今年日本で公開した作品もちゃんと見てくれてる海外の方々とたくさん出会って、いろいろな人にも届いてるんだなっていうことをすごく実感しました」と振り返りました。
上白石萌音さん(最優秀女優賞)
『夜明けのすべて』に出演し、最優秀女優賞を受賞したのは上白石萌音さん。
「この『夜明けのすべて』という映画とのご縁と、一緒に映画を作った監督はじめ、素晴らしいチームの皆様と、そしてこの物語を産み落としてくださった瀬尾まいこ先生に心から感謝申し上げます」と受賞コメント。「たくさんの挑戦をさせていただいて、その度に壁にぶつかって自己嫌悪と周りへ嫉妬にさいなまり続けた年でありましたが、そのたびに本当に周りの方々が、背中で示して下ったりとか、相談に乗ってくださったりとか、優しさをポンと渡してくださったりとか、本当にたくさん支えていただいた1年だったなと思います」と今年を振り返りました。
吉沢亮さん(最優秀男優賞)
『ぼくが生きてる、ふたつの世界』『キングダム 大将軍の帰還』『かぞく』で最優秀男優賞を受賞した吉沢亮さん。
「めっちゃ緊張しますね。こんな素敵な賞をいただけてとても嬉しく思います。ちょうど6年前に新人賞(最優秀新進男優賞)をいただきまして、それが僕にとって初めての映画賞で、すごく特別な思い出があったんですけど、また30になる年にいただけたということで、すごく縁を感じております」と、6年前に最優秀新進男優賞を受賞して以来、2回目となるTAMA映画賞受賞の喜びを話しました。
藤竜也さん(最優秀男優賞)
『大いなる不在』で最優秀男優賞を受賞した藤竜也さん。
「選んでくれて、ありがとうございます。それとバリバリのトップランナーたちと混ぜていただいて、私はまだ現役でいるんだなと。今ちょっと嬉しいです」と受賞挨拶。
今年は北米最大の日本映画祭「ジャパン・カッツ」で特別生涯厚労賞を受賞した藤さんは、50年前に大島渚監督の『愛のコリーダ』でニューヨーク映画祭に招待されたものの、検閲が通らず上映されなかった時のエピソードを披露。大島監督の別の作品が上映した後、トイレに行ったらジャック・ニコルソンが藤さんのもとに挨拶に来て、映画ついて話した貴重な思い出を披露していました。
『ぼくのお日さま』(最優秀作品賞)
最優秀作品賞に輝いた『ぼくのお日さま』からは、奥山大史監督、越山敬達さん、中西希亜良さん、池松壮亮さんが登壇。
奥山監督は『僕はイエス様が嫌い』で2019年にTAMA映画祭の最優秀監督賞を受賞。その授賞式で本作のプロデューサーと出会ったそうです。
スケートのシーンの美しさが際立つ同作。この4名の中では唯一、スケートが初めての経験だったという池松さんは「みんな上手で足を引っ張らないように頑張りました。2人(越山さん、中西さん)がものすごい助けてくれて、カメラが回ってないところではずっと手を引いてくれました」と撮影時を振り返っていました。
『夜明けのすべて』(最優秀作品賞)
最優秀作品賞もう一作品は『夜明けのすべて』が受賞。
登壇した三宅唱監督は「(TAMA映画賞の)パンフレットの後ろにスタッフの皆さんのコメントが一言ずつ書いてあって、 いろいろな人が参加した映画祭の中で、この映画を選んでくださったことをすごく嬉しく思います」と受賞挨拶。その後の上白石さんとのクロストークでは、上白石さんと松村さんの現場でのコンビネーションが、映画の中でもそのまま活かされてたと話していました。
今年も心のこもった温かな授賞式でした。受賞された皆さんおめでとうございます。スタッフの皆さんもおつかれさまでした!
第34回映画祭TAMA CINEMA FORUM(公式サイト)